クラシック音楽の基礎知識

メトロノームが音を出す仕組みとは?ベートーヴェンが愛用した理由

メトロノームの仕組み

「カチ、カチ、カチ、カチ、…」

一定のリズムで音を刻むメトロノーム。メトロノームは音楽用具のひとつで、音楽を演奏する際にテンポ(速度)を一定に合わせるために使用します。幼い頃にピアノを習っていた方は、触ったことがあるのではないでしょうか?

今回は、

  • メトロノームの誕生と歴史
  • メトロノームの仕組みや使い方
  • メトロノームを使った楽曲
について、説明します。

 

メトロノームの誕生

メトロノームが誕生し、普及したのは19世紀頃です。

1813年にアムステルダムに住んでいたドイツ人のヴィンケルが発明し、1815年にドイツ人の機械技師「メルツェル」が改良し、特許を取りました。

「メトロノーム」はメルツェルが名付けた名称で、ギリシャ語で「尺度、拍」という意味の「メトロン」、「基準、法則」という意味の「ノーム」が由来だといわれています。

メトロノームの名前の由来

「メトロン(尺度、拍)」+「ノーム(基準、法則)」

この時期のヨーロッパは、産業革命を経て交通が発達した時代です。音楽の分野においても、楽譜が普及し、音楽作品が不特定多数の人によって演奏されるようになります。

しかし、楽譜によって表されるテンポ表記は、「アレグロ(速く、軽快に)」や「アダージョ(ゆっくりと)」のような、単純であいまいな表現でしかなく、その曲のテンポはそれぞれの演奏家の感覚によって異なっていました。

そのため、統一された速度の指標となるものが求められていたのです。

そんなときに誕生したメトロノームは、1分間に刻む拍を数値化し、どこにいても同じ速度で演奏することを可能にしました。

 

メトロノームをこの世に広めた音楽家


音楽家で初めてメトロノーム表記を楽曲に取り入れた人物は、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンです。

かねてより、メルツェルと交流のあったベートーヴェンは、新しくて合理的な速度の指標に魅了されます。

ベートーヴェンは、当時すでに完成していた8つの交響曲にメトロノーム表記を加えるなど、メトロノームを積極的に利用しました。

交響曲第9番のロンドン初演後の手紙には、「交響曲第9番の成功の大部分はメトロノームのおかげだ」と記されているそうです。

ベートーヴェンがメトロノームに魅了された理由

ベートーヴェンがメトロノームを気に入ったのは、新しいものが大好きという性格によるのも大きいでしょう。

しかし、そのころのベートーヴェンは難聴によって音が聴きづらくなっており、自分の作った曲すらも自分の耳で聴いて指揮をするのが難しい状態でした。メトロノームは音だけでなく視覚でもテンポを知ることができるので、ベートーヴェンには必要不可欠なものとなったのです。

ベートーヴェンのお墓がメトロノームの形をしていることから、関わりの深さが分かりますね。
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メトロノームの仕組み

メトロノームは、どのようにして正確なテンポの音を生み出すのでしょうか。

メトロノームの仕組み

メトロノームの基本原理は、振り子の原理を応用したのものです。

メトロノームには、支点を挟んで上下におもりが付いています。下の大きなおもりは固定されており、上の小さなおもりを動かすことで、振り子が揺れる周期を調節し、テンポを変えることができます。

普通の振り子はそのまま放っておくと、やがて止まりますが、メトロノームは止まるとまずいですよね?

そのためにぜんまいバネがあり、これが振り子の動きを継続させる動力となります。

ゼンマイのばねに蓄えられた力を伝える部品が、振り子につながる機構の一部を弾くことによって振り子の動きを継続させる力を与え、弾く音を生み出します。

さらに、その音がメトロノーム本体に伝わり、内部の空洞部分に共鳴して大きな音となるのです。

メトロノームのケースの材質によって、音色も微妙に変わります。
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メトロノームの使い方

では実際にメトロノームを使ってみましょう。メトロノームを使う際は、楽譜の頭に描いてあるメトロノーム表記をまず確認します。「M.M=100」や、「♪=100」のように表されているはずです。

ここで表される数値が、基準となる音符のテンポを表しています。

「♪=100」であれば、1分間に4分音符を100回刻む速さを示します。


「♪=60」となっていれば、ちょうど拍のテンポが秒針の速さと同じということになりますね。

補足

「M.M」とは「メルツェルのメトロノーム」という意味です。このように表記することで、メルツェルのメトロノームが曲の速度を示すのに有効であることを世の中に広めることができたのですね。

 

メトロノームの種類

もともとはゼンマイばねによる振り子式のメトロノームですが、電子式など様々な種類のメトロノームが販売されています。

電子式メトロノーム

振り子式とは異なり、電子音でリズムを刻むメトロノームです。

主な動力源は電池であるため、置き場所を選ばず、ゼンマイなど部品の劣化が少ないのが特徴です。コンパクトで持ち運びしやすく、音量の調節も容易にできます。

ピアノの練習などに使用するときは、あえて大きな音がする振り子式を使う人も多いと思いますが、テンポをちょっと確認したいときなどには、手軽に持ち出せて使用できるので便利です。

クオーツ振り子式メトロノーム

振り子式でありながら、水平な場所におかなくても使用できる便利なメトロノームです。

ダイナミックな音量を出すこともでき、消音にして振り子の動きのみでテンポを確認することもできます。

振動メトロノーム

テンポを、音を出さずに振動で伝えるメトロノーム。スマートフォンの7倍以上の振動を起こし、身体のあらゆる部分に装着できる最新型タイプです。スマートフォンアプリと同期させて使用することにより、複雑なリズムを作って保存したりもできます。

クラシック音楽だけでなく、あらゆる音楽ジャンルの演奏に活躍しそうです。

製品によってメリットが異なるので、購入するときは、用途に合わせて探してみましょう。

ちなみに、私はダイヤルで速度を設定する電子式メトロノームが好きです。音がプツプツという感じで柔らかく、ピッピッという電子タイプのものほど、アナログ感が失われず操作性も良いという点が気に入っています。
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今日の一曲

100台のメトロノームのためのポエムサンフォニック

メトロノームは、演奏の練習の際に利用することが多いので、表舞台に立つことはないと思っていませんか?

しかし、実はメトロノームが主役楽器になった楽曲というものが存在します。それが、リゲティが作曲した「100台のメトロノームのためのポエムサンフォニック」。それぞれ異なるテンポに設定された100台のメトロノームが一斉になる楽曲です。

楽譜には、次のような奏法が記されています。

ポエムサンフォニック奏法

  • 100台のメトロノームで演奏
  • MM50~144のそれぞれ異なるテンポに設定
  • 2人以上で操作する
  • 100台がなり始めたら楽曲スタート
  • 最後の1台が停止したら終了

ジェルジュ・リゲティは、ユダヤ系の家に生まれた現代音楽作曲家です。生まれた場所は、歴史的にルーマニア領とハンガリー領を行き来するような、不安点な地域でした。

そんな彼のアイデンティティのズレが、彼が作る音楽にも影響を及ぼしたといわれています。「ポエムサンフォニック」のほかにも、「アトモスフェール」というオーケストラ各パート楽器の音程のズレを用いた曲など、面白い作品があります。

興味のある方は、一度聴いてみてくださいね。

寝付けない夜に

先ほど、ダイヤル式のメトロノームが好きと書いた私ですが、やっぱり振り子式のメトロノームも手元にあります。

実は心がざわついている夜や、なかなか寝付けない夜にメトロノームを♪=20~30のテンポにしてじっと見つめながら音を聴くと、ちょっと落ち着いた心持ちになります。ちょっと危ない人みたいですけど…。

眠れない夜には、ぜひ試してみてください。

 

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