クラシック音楽の基礎知識

絶対音感は大人でも身につくのか?絶対音感のメリット・デメリットを考える

絶対音感

絶対音感という言葉を聞いたことがありますか?

絶対音感といえば、偉大な音楽家が持つ特別な能力と考える人もいるかもしれませんが、今回は、

  • 絶対音感とはどんな能力なのか
  • 絶対音感のメリット・デメリット
  • 絶対音感は、大人でも習得することができるのか

について考えてみましょう。

 

絶対音感とは?

まず、絶対音感はどのような能力のことをいうのでしょうか?

絶対音感の定義

絶対音感とは、単独の音の高さ(ピッチ)を正確に知覚できる能力です。英語では「absolute pitch」と表されます。

1オクターヴの中には12の音高(ピッチ)が存在しますが、絶対音感があれば、それらのすべてのピッチについて、他の音と比較せずに音の高さを答えることができます。

絶対音感にもパターンがある

一口に絶対音感といっても、その程度は様々で、例えば次のようなパターンがあります。

  1. 楽器の音を聴いて音高が分かる
  2. 楽器以外の音の音高が分かる
  3. 12のピッチだけでなく、周波数の高さがわかる分かる

1は、ピアノやギター、トランペットなど、楽器の音についてならその高さが分かるパターンです。

2になると、普通はメロディとして捉えないインターホンの音や目覚まし時計の音なども音名で聞こえてしまいます。

音の高さが周波数のキロヘルツ単位で分かってしまう3のパターンでは、ピアノ高さが調律によって、どれくらい変わったとか、オーケストラのチューニングのずれなどまで認知してしまいます。

ちなみに、私は上記1~2程度の中途半端な音感保持者です。生活音については、インターホンや駅のホームで流れるメロディ、救急車の音や、踏切の警報などはわかりますが、さすがに人の話し声や足音などは、音名には聞こえません…。和音(3つ以上の音が重なったもの)がすべて聞き取れないことも。

 

周波数単位で音の高さが分かるなんて、神業の領域ですよね。
coto

 

絶対音感と相対音感との違い

絶対音感とよくセットで用いられる言葉に「相対音感(relative pitch)」というものがあります。

相対音感とは、ある音を基準にして、別の音が基準の音とどれくらい違うかを認識する能力です。

例えば「ラ」の音を聞いた後に、どれが「ド」の音になるかが分かるという具合です。

一般的に、絶対音感を身に付けるには幼少の頃から訓練が必要といわれるのに対し、相対音感はどんな人でもある程度備えています。しっかりと訓練をすれば、持つことができ、上手に音程をとれるようになります。

 

絶対音感のメリット・デメリット

絶対音感を持っていると、得することもあれば、ちょっとした問題を抱えることもあります。メリットとデメリットについて考えてみました。

 

メリット

  • 聴いた曲を楽譜にすることができる
  • 楽譜を見るだけで、その曲がどんな音楽かが分かる
  • 楽器を使わずに作曲できる

 

デメリット

  • 周囲の音が音名に聞こえるため集中できない
  • 音の微妙な変化に過敏になる

 

では、具体的に見ていきましょう。

メリット聴いた曲を楽譜にすることができる

一番のメリットは、耳から聞こえる音楽を楽器を使わずに譜面に落とせることでしょう。メロディだけでなく和音も聴き取ることができれば、楽譜がなかなか手に入らない状況でも、音楽を楽譜の形して自ら演奏することができますよね。

 

メリット 楽譜を見るだけで、その曲がどんな音楽かが分かる

知らない、または聴いたことのない曲の演奏に取り組む場合、メロディを譜読みして、楽器で弾いてみて音を聴きながら「こんな音楽なんだ」ということを認識することがあります。

でも、絶対音感があれば、楽譜を見ながら頭で音を組み立てられるので、楽器を使って耳で確認しなくても、曲の様子を知ることができます。

 

メリット楽器を使わずに作曲できる

絶対音感は自分で作曲をする場合にも約に立ちます。

ペンと五線譜さえあれば、頭で音楽を組み立てながら楽器を演奏せずに作曲することが可能です。簡単なメロディなら鼻歌を歌う感覚で容易に楽譜に落とせそうですが、いくつもの楽器を使う楽曲を作るには音の組み合わせも頭で組み立てなければならないので、かなり優れた音感が必要となります。

 

耳が不自由だったベートーヴェンも絶対音感の保持者です。音を聴かずに交響曲など数々の楽曲を生み出すことができたのは、絶対音感があったからといわれています。
coto

 

デメリット周囲の音が音名に聞こえるため集中できない

私の場合は、絶対音感をそれほどデメリットに感じたことはありませんが、メロディー性のある音が聴こえてくると、無意識にそれに耳が傾いてしてまうと感じることがあります。

例えば、ドラマを観ていてBGMが流れていると、その音楽に聞き入ってしまって台詞が頭に入っていなかったりします。また、音楽を流しているときに、子どもが別の歌を歌ったり、音の出るおもちゃ遊んだりしていると、なんとなく心地悪さを感じたりすることもあります。

 

デメリット音の微妙な変化に過敏になる

周波数レベルで音の変化が分かる人は、普段の生活さえしにくくなることがあるかもしれません。

普通の人にとっては何ともない音の微妙な変化が分かってしまい大きな変化に感じてしまうので、耳から聴こえてくるものに対して過敏になり、ストレスに感じることもあるでしょう。

 

絶対音感は大人でも身に付けられる?

絶対音感に少なからず興味を持つ人は、

question
これからでも訓練すれば身に付けることが可能?

と思う方もいるでしょう。

そこで、絶対音感は大人でも訓練すれば習得できるかという点について考えてみたいと思います。

 

一般的には、6~7歳がリミット


一般的に、何も訓練しないで絶対音感を保持している人は20万人に1人といわれています。しかし、適切な訓練を行うえば絶対音感は習得することができ、その訓練の臨界期は6歳頃までと考えられています。

実際に、絶対音感育成プログラムなどを展開する音楽教室では、そのトレーニングの対象を6歳~7歳までの幼児に限定している場合が多く、大人に対して絶対音感訓練を行っているスクールは見つけられませんでした。

 

「大人でも訓練により習得できる可能性がある」という研究も

絶対音感は大人になると習得は困難としながらも、訓練により身に付く可能性があることを示した研究も報告されています。

43人の被験者に対して12~40時間のトレーニングを行ったものです。43人中、14%に相当する6人の被験者が、聞いた音の高さを90%以上を正確に答えたという結果が示されています。

この研究は、幼少期に訓練を受けていなくても、方法によっては大人になってからでも絶対音感を習得できるという可能性を示したものです。直接的に大人でも習得可能だと証明するものではありませんが、かといって不可能とも断定できません。

個人的には、ピアノなどの鍵盤楽器による単音のメロディであれば、幼少期を過ぎても訓練次第で音名を聞き取れる能力をつけることができると感じています。

 

実際に、私は5歳のときに音楽教室に通い始めましたが、絶対音感を習得するための特別なレッスンは受けていません。ピアノを触り、7歳頃からソルフェージュ(音を聞き取って楽譜にする聴音などのレッスン)を受けることで自然に音感が付きました。そのようなケースは多いと思いますよ。
coto

 

音楽家や演奏家に絶対音感は必要?

さて、音楽を勉強している方のなかには、

question
音楽家ってみんな絶対音感を持ってるの?
question
演奏家になるには、絶対音感が必ず必要?

と思う方もいるかもしれませんね。

さきほどご紹介したように絶対音感にはメリットがあります。演奏途中に、楽譜との違いやミスに気付くこともできますし、耳コピにも役に立ちます。

また、音大の入試で課される、「聴音(聴いたメロディや和音を楽譜に書きとる)」という試験科目にもあまり苦労することなく対応できるでしょう。

しかし、実際にプロの音楽家に要求される能力は、絶対音感よりも相対音感の方です。

クラシック音楽は、「リズム」「メロディ」「ハーモニー」の3大要素で構成されますが、これらをいかにうまく組み合わせるかが「美しい」と音楽を生み出す鍵となります。単独の音を正確に聞き分ける絶対音感よりも、音同士の組み合わせ、つまり相対的な音程を認識する相対音感の方が重視されるのです。

 

プロの音楽家になるには相対音感を鍛えるべし! 絶対音感もある人は、相対音感と上手に使い分けて利用したいですね。
coto

 

今日の一枚

マルタ・アルゲリッチ 『デビュー・リサイタル』

今回は、おすすめの名盤をご紹介します。

マルタ・アルゲリッチは、アルゼンチン生まれのピアニストです。“鍵盤の女王”と称される彼女ですが、「実は絶対音感を持っていない?」という情報もあります。

彼女の魅力は、何と言っても女性ピアニストとは思えないほどのダイナミックな演奏と力強いタッチです。情熱的で心を揺さぶられずにはいられない若き日の演奏をぜひ聴いて欲しいと思います。

 

曲目はこちら

  • ショパン スケルツォ第3番、舟歌
  • ブラームス 2つのラプソディ第1番、第2番
  • プロコフィエフ トッカータ ハ長調
  • ラヴェル 水の戯れ

ぜひ、アルゲリッチの音楽に触れてみてください!

おすすめ!

『デビュー・リサイタル(ショパン・ブラームス・リスト・ラヴェル・プロコフィエフ)』(ユニバーサル ミュージック)マルタ・アルゲリッチ

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